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「顧客選び」と「値上げ」で無理なく儲けよう!

2022年は原油価格高騰や円安等が原因で、物価が高騰し続けており、今も安定はしていない。価格維持をするために、努力をしてきた企業も多かったのではないだろうか。価格維持が困難で、値上げや廃業を余儀なくされた企業も多かったように感じる。
価格の決め方は、①コストプラス価格設定法(必要な経費から算出)、②需要価格設定法(市場価格から考える)、③競争志向型価格設定法(ライバルから考える)などがあるが、今年は必要なコストから値上げを余儀なくされた場合が多いのではないだろうか。コストプラス価格設定法は間違いではないが、物価が上がる限り、値上げを続ける必要が出てくる。

■価格の現状維持は良いことなのか?

顧客の離脱が怖くて、値上げに踏み切れていない企業も多いのではないか。顧客にとって、安い価格は有難いが、会社が無理をしすぎると、経営維持が難しくなってしまう。理由は、

  • 価格の現状維持を頑張っても限界がある。
  • 限界を超えたコストダウンは、会社の収益を圧迫させて、企業体質を脆弱なものにしてしまう。

の2つである。無理をする経営は、事業の継続を難しくしてしまう。しかし、売上が横ばい、もしくは減少傾向で、コストだけが増加している現状において、現状の市場での価格は上げにくい。理由は、顧客も値上げに苦しんでいるからだ。しかし、値上げできなければ、継続できなくなる。では、適正な値上げとはどのようなものなのだろうか。

■本来の「値上げ」が持つ意味とは?

 値上げなどの価格を決める前に、自社の顧客を分析する必要がある。例えば、「既存顧客はどんな層が多いのか?」「新規顧客は、どうやって獲得しているのか?」などである。
このとき、見込み顧客の4つの定義の視点から考えてみよう。

ニーズがあること:
顧客が自社の商品・サービスを欲しいと思って貰えること。市場の大きさを測るためにニーズ調査を行うのは、買ってもらえるターゲット層を発見するためである。
②支払能力があること:
提示された金額(価格)を支払うことができること。例えば、1,000円しか持っていない人に1万円の物は売れない、ということだ。
③購入資格があること:
これは購入のタイミングを示す。例えば、満腹のときに、どんなにおいしそうな料理を提示されても興味を持つのは難しいだろう。訴求するなら、空腹のタイミングになる。
④接触ができること:
どんなに素晴らしい商品・サービスでも、顧客が知らなければ、購入ができない。もしくは知っていたとしても、購入手段がなければ買えない。つまり、顧客との接触が可能なルートや方法がなければ、売ることができないのだ。

この4つを満たしたときに顧客は購入をする。どれも重要ではあるが、物価高騰で重要になってくるのは支払能力だろう。値上げをする事で顧客が去るのは、「支払い能力がない」または「価格に見合った商品ではないと判断される」からだ。逆に値上げすることで、新たな顧客を獲得できる場合もある。つまり、値上げは顧客層の変化を示す。

ここで判断が必要なのは、「今までの顧客を維持するべきか?」「値上げに応じた顧客層を開拓するのか?」の選択である。
顧客維持を選択するのなら、今までの顧客層が買うことができる商品・サービスに変える必要がある。例えば、手ごろなパソコンの販売を行っていた店は、コロナ禍で低価格の商品の入手が困難になったため、売るものが無くなったので、中古のパソコンを仕入れて、メンテナンス・修理をしたうえで、販売する形態に変更する、などである。

値上げを選択するなら、新しい市場の開拓になるので、収益が取れる顧客層を狙うことになる。例えば、高性能でこだわりのあるパソコンを求める層だ。また、新しい市場へのアプローチは、既存の販路のルートを使えないことが多い。理由は、顧客層によって買い物の方法やルートが異なるからだ。

蛇足ではあるが、価格を高くした方が、顧客の質は上がる。値引きを言う顧客ほど、クレームや問い合わせが多い。場合によっては、トラブルも生じる。結局は、低価格層の顧客は、高価格層の顧客よりも労力を費やすことが多く、採算が合わなくなることが多いことを視野に入れておこう。

■価格を上げる方法

では、いきなり値上げができるのか、というとそうではない。新規顧客を獲得するのは難しいし、多くの時間を要する。だから、既存顧客を維持しながら、新規顧客を獲得していく戦略になる。具体的には、次の3つの手順になる。
①新規顧客向けの商品・サービスを開発する。
②新規顧客に対し、新しい価格で販売する。このとき、2〜3年後を見据えた価格であり、十分な収益が確保できる価格にする。同時に販売ルートも開拓する。既存顧客に対しては、既存の価格に据え置く。
③顧客の割合が、「新規顧客>既存顧客」になる時期が来たら、今度は、既存顧客への商品・サービスを値上げする。3割ほどは既存顧客が去るが、7割程度は残ることが多い。売上も一時的には減少するが、収益は増加する。理由は、コストが減るからだ。
もし、顧客への感謝の意味を込めて、既存顧客に対して価格維持を続けていきたいなら、新規顧客からの収益を既存市場で賄える場合に限定することが必要だ。

■持続可能な経営は、無理の無い「顧客選び」と「値上げ」で儲けること。

デフレが続いたこの30年間は、値上げを悪と捉える風潮となってしまったが、価格の値上げ無くして、経済成長は難しい。価格が上がり、収入が増えることで、商品・サービスの購入の意志が醸成される。値上げによって顧客が減少しても、客単価は上昇するので、売上が変わらないことが多い。顧客が減ることで、充実したサービスや、更なる品質の良い商品を提供できることが可能になる。仕入れコストや業務量、作業時間も減る。結果として効率や評判が良くなり、収益が増える。その収益を給料として従業員に還元すれば、従業員のモチベーションも上がり、良い商品やアイデアを出してもらえることが多くなり、会社が活性化する。プラスの循環になる。そのためには、収益の出る「顧客選び」と「値上げ」は必要だと言える。


兵庫県中小企業団体中央会「月間中央会第779号 2022年12月号」に掲載していただいたものを転載いたしました。
掲載記事は、こちらをご覧ください。

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