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苦情という名の贈り物

 苦情が生じたとき、どのように考え、行動していますか?苦情は、サービスや商品に対する欠陥や不満・不信などが原因で生じることが多いため、できることならば、対応したくないものです。でも、苦情は本当に、厄介者なのでしょうか?

■苦情の種類

 苦情は、主に次の2つに分類することができます。

①ストレス解消型苦情

顧客は、不快・不便・不信を感じた商品・サービスについて大きくストレスを感じるがゆえに、聞いてもらうことで、気持ちを楽にしようとします。つまり、顧客のストレスを解消するために苦情を言う場合を指します。

②解決要求型苦情

提供された商品・サービスに欠陥等があった為に、困ってしまい、何らかの解決策が欲しいために言う苦情のことを指します。例えば、購入した電化製品などが初期不良で動作しなかった場合などです。

■苦情の対処方法

 苦情のほとんどは、①のストレス解消型苦情であることが多いため、誠意を込めて対応を行なえば、解決することが多いでしょう。しかし、店や企業のサービスの軸とするものと顧客の不満が一致すると難しい場合があります。例えば、「手作り・丁寧」をモットーとする飲食店で「料理が出るのが遅い」と苦情が出れば、謝罪して早く出すことを心掛けることで、料理の質に支障が出る恐れが出てくるでしょう。この場合は、謝罪とともに、店の方針を顧客に理解していただくための工夫が必要になってきます。

 また、②の解決要求型苦情である場合は、サービス・商品そのものに欠陥や欠点があるのにも関わらず、店や企業が、気がついていなかったという可能性があります。そのため、直ぐの対処ができかねる場合もあるので、謝罪とともに、企業としての今後の姿勢を示す必要があります。そうしなければ、対処をしていただけなかったと顧客が感じ、不満が増大し、2度と利用していただけなくなる可能性が大きくなるでしょう。

■苦情の良さ

 苦情の対処方法は、一見、方法論であるように感じますが、よく見てみると、顧客が何らかの要求を店や企業に求めてきていることが分かります。顧客は、苦情という名を借りて、店や企業にコミュニケーションを求めてきているのです。何も言わずに去る顧客からは、何も得ることができません。苦情という形であっても、店や企業に対し、様々な意見や価値、要求といった声を届けてきていただいているのです。また、その中には、本音が含まれていることもあります。得ることが難しい顧客の貴重な声が聞けるチャンスを与えていただいているのですから、苦情とは、いわば、顧客からの「贈り物」といえるのではないでしょうか。

■宝の山としての価値

 最後に、苦情を上手に活用している面白い例をご紹介いたします。福井商工会議所で運営している「苦情・クレーム博覧会」(現在、サイトは閉鎖)は、苦情を商品として取り扱っています。この中には、様々な苦情が寄せられており、この中の投稿内容から、ヒット商品を出した例もあるという優れものです。このように考えると、苦情は、嫌なものではなく、むしろ、ビジネスチャンスを与えてくれる「宝の山」とも言えます。

 苦情を消化活動と考えて、謝罪に終始せずに、上手に活用する方法を考えてみられてはいかがでしょうか。


奈良県中小企業連合会 2008年10月号に掲載していただいたものを転載しています。
掲載記事をご覧になりたい方は、こちらです。

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