経営改善の鍵は顧客選別!足枷顧客と宝物顧客

売上が増えて、忙しさも増し、顧客対応に追われる日々。しかし、なぜか利益が残らず、全然楽にならない。事業を大きくしても状況は変わらず、不景気が訪れると余裕がなくなり、倒産の危機に瀕することも。幸せな未来を築くために事業拡大を続けているのに、なぜこのような状況に陥るのでしょうか。
 さらに、売上が低迷している時期でも同様の問題が発生します。売上を上げようと必死になるあまり、どんな顧客からの依頼も受け入れてしまい、結果として利益を圧迫してしまうのです。

1.利益が増えない原因

 事業を始めた頃は、とにかく顧客獲得に必死で、集客が最重要課題でした。しかし、顧客の中には手間ばかりかかって薄利、または赤字になっている「足枷顧客」が存在することをご存知でしょうか?
 一般的に、「売上の80%は上位20%の顧客から生まれる」 と言われています。この上位20%の顧客が会社に大きな利益をもたらす「宝物顧客」です。一方、下位20%の顧客は、仕事をいただいてもマイナスになることがほとんど。彼らは頻繁に電話をかけてきたり、契約外の仕事を要求したりと、駒使いのように使い倒されることも多いです。その結果、労力と時間が過剰に消費されます。足枷顧客も大切な顧客だと思って対応していると、会社の利益はどんどん吸い尽くされていくでしょう。

例えば、現状として、5社の顧客がいて、売上1000万円、利益15万円とします。この顧客別の売上を見てみたら、赤字になっている顧客が2社あります。この2社との取引をやめると、売上は850万円に減少しますが、利益が70万円になり、4.7倍になります。しかも、赤字の顧客への作業が減り、従業員の負荷も減ります。

2. 足枷顧客と宝物顧客の選別方法

では、どのようにして足枷顧客と宝物顧客を選別すれば良いのでしょうか?
赤字の顧客が単純に足枷顧客とも言い切れません。まずは、お客様全員を評価しましょう。
 手順としては、最初に顧客リストを作成します。すべての顧客をリストアップします。下記の選別基準に従って、評価を実施します。良い評価が多い顧客が宝物顧客であり、上位20%程度になります。悪い評価が多い顧客が足枷顧客であり、下位20%が目安となります。

3.宝物顧客を育て、足枷顧客が敬遠する対策を

顧客の選別が完了した後、全ての顧客に対してヒアリングを実施します。その目的は、提供している商品やサービスに関して、満足している点や改善を望む点を明確にすることです。顧客のニーズや課題を詳細に把握し、商品やサービスを改善・最適化することで、宝物顧客の満足度のさらなる向上を図ります。これにより、宝物顧客との関係を一層深め、彼らをより重要なパートナーとして育成していきます。

 一方で、足枷顧客にもヒアリングを行います。これは、彼らの要望を理解した上で、その要望とは逆の戦略を取ることで、自然に離れていくことを狙うためです。

 具体的な事例として、高級志向のレストランを見てみましょう。洗練されたクラシックな雰囲気を持つフレンチレストランに子連れの顧客が来店すると、店内が騒がしくなり、他の顧客が落ち着かなくなる可能性があります。これを防ぐために、レストランはお子様メニューを廃止し、大人向けのメニューのみを提供するようにしました。子供向けのサービスをやめた結果、子連れの顧客が減少し、店の雰囲気を維持できるようになりました。その結果、静かで落ち着いた時間を求める顧客が集まり、常連客の満足度が向上しました。

 このように、足枷顧客のニーズを把握し、その逆を行う戦略は、ターゲットとする顧客層に適したサービス提供につながります。さらに、「ターゲット顧客=宝物顧客」とする明確なターゲティング戦略を持ち、その顧客が会社の経営戦略と一致していることが重要です。

4.まとめ

 顧客選別は一見すると冷たい行為のように思えるかもしれません。しかし、中小企業にとっては、限られたリソースを最大限に活用し、より良いサービスを提供するためには必要な戦略です。宝物顧客との関係を深め、足枷顧客への対応を見直すことで、経営改善や利益向上の鍵を握ることができます。足枷顧客と宝物顧客を見極め、効果的な戦略を実行することで、持続的な成長を目指していきましょう。


兵庫県中小企業団体中央会「月間中央会第802号 2024年11月号」に掲載していただいたものを転載いたしました。
掲載記事は、こちらをご覧ください。

関連記事

「安売り」は破滅を招く疫病神?

経営の勘どころ~どこで資金は不足する?~

「顧客選び」と「値上げ」で無理なく儲けよう!

苦情という名の贈り物

ケチる代償、チャンスを掴む投資

PAGE TOP