「物創り」ストーリーを描き続けるネットショップ

 福井県鯖江市にある株式会社ヤマト工芸は、昭和22年に個人事業として創業した後、昭和48年に漆器の製造業者として法人化した。漆器の市場が縮小する中、平成14年頃から新規事業として、雑貨の分野に参入する。中国の低価格な製品が普及する厳しい環境の中、漆の「伝統」と「手作り」にこだわりつつ、現在風のモダンな「デザイン」を核に、「yamatojapan」ブランドを立ち上げた。主に20代~30代の女性の心を掴んでおり、多くのリピータやボランティアのアフェリエイトを生みつつ、市場を広げている。

現在は、3代目の高野利明氏と後継者である高野健太郎氏が経営を行っている。企業理念は、「ヤマト工芸の健全な成長とお客様に夢を届けて喜ばれる物創りを目指す」としている。

当社の主な特徴は、

  • 他社に真似できないオンリーワン的企業
  • 「手作り」にこだわった「物創り」を行いながら成長する組織とネットショップ

にある。

■「作る」から「創る」へ(ネットショップ参入の経緯)

 新規の市場参入を開始した当時、「低価格な中国製品に勝つ」「自社技術の核である漆の活用をする」ことを考え、当社の道筋として、「漆と雑貨の融合」と決めた。当時は、雑貨も漆器も国内での生産が減少しつつある時期であり、「両者の融合した商品」の市場は皆無に近い状態であったといっても過言ではない時期であった。

 この時期に、「下請け製造業」としてのノウハウしかなく、商品開発や販路開拓のためのノウハウも持たない当社が、試行錯誤しつつ、新商品と新市場を創ることから事業はスタートした。素人ながらに、デザインを創り、試作品を創り、東京のギフトショーに出展したが、成約に結びつくことは無かった。しかし、来場者の多くの反応は良く、手ごたえを感じていたという。これを成果に結びつけるために、模索していたところ、インターネットによる販売を勧められ、開始したのが、ネットショップ参入へのきっかけであった。

 最初は、Yahooのショッピングサイトへの出店を行うが、検索エンジンの結果も上位に表示されることもほとんどなく、アクセス数も少なかった。これと同時に、自社運営の手作りネットショップサイトも手がけた。ショッピングサイト出店の主な目的は、「ネットショップのノウハウを習得する」と「ブランドの認知を広める」「自社サイトへの誘導を行う」であったが、自社運営のサイトは、将来のメインサイトを創るためのものであり、独自展開ができるための礎を築くためのものであった。

 次に集客数を増やすために、ネット広告として、オーバーチェアを利用した。一般的な商品であり、競合の多いキーワードを用いたため、広告費用が高く付いたが、サイトへの誘導は成功し、アクセス数は伸びた。特に、Yahooのショッピングサイトよりも、自社運営サイトには、大手の卸や小売業者からの問い合わせも来た。他には類を見ないモダンなデザインと、技術と漆を利用した雑貨が目を引いたようであった。

 また、継続しているギフトショーへの出展は、ネットショップとの相乗効果を大きくしていた。

■「遊び心」を加えつつも、「お客様」が喜ぶ仕組みを創る。(リピータを増やす仕組みを創る)

 ネットショップの悩みは、「集客」に尽きる。「雑貨」という特性上、「リピータ」の獲得が難しい。当時は、「ダストボックス」がヒット商品であり、主力商品であった。用途や使用期間を考えれば、再購入を検討するのは、何年も先のことである。そこで、再来訪を促す目的で、始めたのが、カウントのキリ番によるプレゼントである。これを採用した理由は、①「手作り」ホームページとはいっても、パッケージソフトを基本にしているため、難しい技術は導入できなかったこと、②カウンタの仕組みは無料で手軽に導入できたこと、③「お客様」にとっても、明確でわかりやすい基準であったこと、がある。
これにより、一度でも来訪していただいたお客様がカウンタを見るために来訪することが多くなり、新商品の告知が効果的にできるようになった。

■「見える成果」を糧に、やる気と商品開発を創る。

ヤマト工芸の大きな特徴は、商品開発にもある。年間100種類以上もの新商品を創っているのにもかかわらず、専属のデザイナーは1人のみである。1人では、賄いきれない数であることは、一目瞭然である。雑貨事業を担っているのは、会社の将来を担う若手の技術社員が大半である。彼らによって、定期的に新商品の企画委員会が開催され、アイディアの提案・試作が行われている。最も注目すべきなのは、技術者がアイディアを考えているがゆえに、試作品も直ぐに作成することができる。

企画委員会でアイデアを提案

しかも、出来上がった試作品は、すべて、審査の対象となり、掲載の基準がクリアされれば、自社運営のネットショップに直ぐに掲載されるという点である。目の前で、自分の考えた商品が販売される、そして、売れる。これが、大きな喜びとなり、若手のモチベーションを大きく向上させている。さらに、開発した商品は、売上に応じてインセンティブ(報酬)が付与される仕組みとなっている。

ギフトショーで大賞を受賞

■徹底した「お客様重視」が、根強いファンを生む。(プラスの連鎖を創る)

 販売数が増えれば、問い合わせやクレームの数も増えていく。少しの傷も、パッケージの不出来も、輸送上のトラブルも、すべて返ってくる。これを1人で担当しているのが、角谷さおり氏である。「お客様」の立場に常に立ち、どんな些細な質問もクレームも、真摯に受け止め、親切丁寧に対応している。ネット販売だからといって、メールの対応だけで終わらせない。必要とあれば、電話やFAX、はがきなどの手法を用い、連絡を行う。会社側に非が無くとも、お客様の訴えに応じて、代品の送付も行う。微妙なサイズ変更もリーズナブルな価格で請け負うことも行い、会社の誠意を示している。これが、顧客のブログやホームページからの絶賛につながり、口コミで広がるプラスの連鎖を生んでいる。

■今後は、お客様とともに創る

良い商品は、お客様の要望から生まれる。その要望を形にするのは、社員である。お客様との良い関係を築いてきた当社は、新商品に関する要望もインターネットやアンケートを通じて寄せられてくる。今後は、商品創りにお客様とともに参加ができる仕組みを創り、より喜ばれる「物創り」を提供していきたいと願っている。そのための仕組みをネットショップ・ホームページで実現したいと思っている。

経営理念

全国商工会連合会 2009年12月号 に掲載していただいた記事を転載しています。
掲載記事はこちらをごらんください。

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